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ジャンル:ドキュメンタリー
製作国:イスラエル
監督:アリ・フォルマン
主演:アリ・フォルマンほか
イスラエル軍の兵士だったアリ・フォルマン監督自身が、レバノン内戦で起きた「パレスチナ難民大虐殺」という狂気的な出来事を追った戦争ドキュメンタリー。この映画は通常のドキュメンタリーとは異なり、ほぼ全編アニメーションで当時の様子を再現しています。レバノン軍団によるパレスチナ難民大虐殺に加担したイスラエル軍のフォルマン監督自身が、その記憶を容赦なく淡々と掘り起こします。

薄暗いバーで陰気そうな二人の中年男がコソコソと話をしているシーンからこの映画は始まります。一人はこの映画の監督であるアリ・フォルマン。もう片方の男はレバノン内戦で共に戦った彼の戦友レオン。どうやらその戦友はレバノン内戦時の記憶が悪夢の中で鮮明に蘇ることに苦しめられているらしく、そのことをフォルマンに打ち明けている。フォルマンは親身に話を聴くが、途中で奇妙なことに気付く。フォルマン自身もレバノン内戦に参加し、戦火をくぐりぬいてきたはずなのに、その記憶がほとんど無いのだ。

記憶に残っているのは、ベイルートの穏やかな海で戦友たちと一緒に海水浴をしながら、夜空へ打ち上げられる照明弾をゆったりと眺めていたことだけ。それ以外の記憶がポッカリと抜け落ちてしまっている。そんなわけはない。戦争には確実に参加したはずだ。

悩んだフォルマンは、精神科医を訪れ、記憶が抜け落ちてしまったことを打ち明ける。精神科医は「ベイルートの海で一緒にいた当時の仲間を訪ねて話を聴いたらどうだ?そこから何か記憶が甦るかもしれない」とアドバイスする。

フォルマンはアドバイス通りにかつての戦友や上司たちに会いに行き、当時の様子をインタビューしていき、映画はそのインタビューの内容、つまりは戦友たちの戦争の記憶をアニメーションで再現していきます。そしてインタビューを続けるうちにフォルマンは戦争の記憶を徐々に取り戻していきます。そこにはあまりにも凄まじい記憶と衝撃の事実がありました・・・・

どんな面白さ?

1982年にレバノン内戦で起きた、イスラエル軍とレバノン軍団による、パレスチナ難民大虐殺事件(サブラー・シャティーラ事件)の正確な犠牲者数はわかっていませんが、一説によると3日程度の間に3000人以上のパレスチナ人が殺されたと言われています。

第2次世界大戦中に迫害・虐殺されたユダヤ人が、1982年という比較的最近の時代に大虐殺に加担していたという事実を、自分がほとんど知らなかったことにまず衝撃を受けました。映画の最中に何度も「こんなの知らなかった・・」と思わず声をあげてしまいました。

戦争を批判したり、平和を訴えるという戦争モノにありがちな教育的ドキュメントとはかけ離れていて、かつての兵士たちの生々しい記憶が淡々と容赦なくアニメーションで再現されていきます。そこには虐殺に参加した当事者たちの「心理」と「記憶」だけが厳然と横たわり、「主張」や「結論」は存在しません。

そして当初フォルマンが「唯一の記憶」としていた、ベイルートでの海水浴の記憶は、驚いたことにフォルマン自身がねつ造した「ウソの記憶」であることが劇中で明らかになります。虐殺に参加した記憶をフォルマン自身が自己防衛本能的に蓋をして、嘘の記憶に塗り替えていたのです。無意識に。

そして映画の最後にはフォルマンの脳裏に鮮明に甦る、夫と幼い子供を殺された女性たちが泣き叫びながら助けを求めて走ってくる記憶と、当時のニュース映像(この映像のみ実写)で幕を閉じます・・・

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