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チリに広がるアタカマ砂漠。ここは標高が高いうえに空気が澄んでいるので天文観測に適し、世界中から天文学者が集まる場所。

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それと同時にピノチェト政権時代に多くの人が虐殺され、埋められた地でもあり、現在でもおびただしい数の遺体が埋められている場所でもある。今日も行方不明になった遺骨を探して、遺族たちが砂漠を掘り返す。

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遥か遠くの宇宙に瞬く数十億年前の光を捉える天文学者と、亡くなった人を探し求めるピノチェト政権犠牲者の遺族は共に「過去」に目を向けている。星が輝く天と虐殺の遺体が埋まる地下が交差しながら、天上と地下の「過去」に光を当てるドキュメンタリー。

正直に言ってしまうと、どうも自分はタブー視されるような「暗い過去」「負の遺産」になんとも言えぬ魅力を感じてしまうところがあります。

だって輝かしい遺産は多くの人たちの目にさらされ、語り継がれていく。これを逆に言うと人が触れた分だけ、それらは人の手によって「更新」されていくことになると思うけど、
ネガティブな負の遺産は人があまり寄り付かない。だから年月が経過してもそのまま手付かずの状態で残る。

「更新」されなかった負の遺産には人の手が介在することもなく、そのままの形で風化しながら佇む姿になんとも言えぬリアリティを感じるのだと思う・・・。

そして「負の遺産」にさらに追い討ちをかけるように「タブー」の要素が加わると、更に好奇心を刺激されてしまうのです。

この映画の虐殺というタブー的負の遺産と、天文学のコントラスト。天の光と地下の闇というコントラストが面白い。

ピノチェト政権と言えば、サンチエゴスタジアムで1日で3千人近く虐殺したとされ、強制収容所も数多く建設。誘拐、拷問もひろく行われていたとされています。そしてこの映画の舞台も強制収容所跡地。

まったく話は変わって、長く続いたピノチェト政権が失脚する直前、新しい民主主義政権を求めて、旧体制と闘ったガエル・ガルシア・ベルナルの「NO!」という映画が記憶に新しい。光のノスタルジアと一緒に併せてみても面白いかもしれない。


南米ドキュメンタリーの巨匠パトリシオ・グスマンによるドキュメンタリーは全国のミニシアターで上映中。

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