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先日、「ダメ男と輝く女が創りだす素晴らしき世界」の特集で、良い映画の条件である(?)ダメ男と、それを陰で支える強く優しい女性が独特の素晴らしい世界観を醸し出す名作を紹介しました。でも今回は違う。リアル。つまりはノンフィクションのリアルダメ男。ドキュメンタリーダメ男。物語の中で創りだされたダメ男ではない、リアルなダメ男がリアルに困難に立ち向かう姿を見れば勇気付けられないわけがない。

今回は「デート・ウィズ・ドリュー」「アンヴィル」「KAZUYA 世界一売れないミュージシャン」の3作品。

デート・ウィズ・ドリュー

勇気付けられるという意味ではここ最近、自分の中で最もヒットしたダメ男ドキュメンタリー。主人公は彼女なし、かつ無職。無職なので収入は無いがローンの返済義務はバッチリある。ローン返済が滞り、督促がくると「お母さんに肩代わりしてもらう」ブライアン・ハーズリンガー27歳。

6歳の時にE.Tに出演しているドリューバリモアを見て熱烈なファンになって以来、頭の中は常にドリューバリモア。ドリューバリモアに会いたくて会いたくて仕方がない。そんな彼がふとしたことからテレビのクイズ番組で優勝し1100ドルを手に入れるが、そのクイズ番組で優勝を決めた正解が「ドリューバリモア」だった。

「これは運命に違いない・・・おれは30日以内にドリューバリモアとデートする運命にある・・」
ストーカー資質たっぷりの天然パーマのブライアン(無職)が、あの手のこの手を尽くしてドリューバリモアに近づく為に奮闘する30日間を描いたセルフドキュメンタリー。

この映画の一番面白いところは、自分が「職無し」「キモイ」「運動オンチ」というダメ要素満載であることを認識しながらも、それを全く気にせずに超人的な行動力でズンズンと前進していくブライアン自身。自分のダメ要素と愛されキャラを武器にして、大物から小物まで様々な人たちを味方につけて前進していく姿は爽快であり、ラストは不覚にもボロボロと泣いてしまった名作。落ち込んだ時に観たら絶対に勇気付けられます。 「こんなのでも良いんだ・・・」

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アンヴィル

アンヴィルは1970年代に結成されたメタルバンド。1984年にはボンジョビ、ホワイトスネイク、スコーピオンズと肩を並べて来日。メタリカやアンスラックス、スレイヤー、ガンズ&ローゼスなど著名なバンドたちに影響を与えながらもその後失速。当時肩を並べて共演したバンドたちは世界的に売れたがアンヴィルだけは全く売れなかった。

この映画の監督はトムハンクス主演の「ターミナル」の脚本も務め、スピルバーグともタッグを組む超売れっ子脚本家サーシャ・ガヴァシ。10代の頃アンヴィルの大ファンだったというガヴァシ監督は、ハリウッドで成功を収めた後、「原点に戻りたくなった」と大ファンだったアンヴィルと再会。「服装も、情熱も昔と何一つ変わっていなかった」ことと、売れなくても家族が出来ても働きながら30年間以上ずっとバンド活動を続けていることに感銘を受け撮影を決意したそうです。

撮影が始まると、彼らにヨーロッパツアーの話が舞い込み「もしかしたらレコード会社の目にとまるかも!」と意気揚々とヨーロッパツアーを開始する。しかし収容人数1万人の巨大会場に観客は174人、ライブハウスにはギャラを払ってもらえない、駅で寝泊まりする等見るに堪えないダメツアーを展開する。
それでも心優しい姉から借金をしてまで19作目のCDを製作しながら「おれたちロックスターになるんだ!」と意気込む51歳ハゲメタルに2年間密着したドキュメンタリー。

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世界一売れないミュージシャン KAZUYA

1990年代に北海道を席巻していたバンド「PHOOL」。メジャーデビュー間違いなしと言われてからそのまま10年間鳴かず飛ばず状態のまま解散。

その「PHOOL」でボーカルを務めていたKAZUYAは解散後にソロ活動に専念するが、売れなさ加減はバンド時代よりも更に加速。売れない売れない、とにかくひたすら売れない。ライブをしてもお客はたいてい3~4人。ヨーロッパツアーで常に100人程度は動員していたアンヴィルが超エリートに見えてしまうほど、こちらは更に売れない。

客がいないから当然のように音楽での収入は無い。それどころか、そもそもバイト・定職問わず働いた経験が殆ど無い。周囲からは
「あいつの職業?ヒモでしょう」
と言われ、実家に帰れば
「やる気が無い」
とお母さんに怒られる50歳。

デートウィズドリュー、アンヴィルの主人公たちは、困難に直面しながらもそこに懸命に立ち向かっていた。ところがこの映画の主人公KAZUYAは困難に直面すると、そのまま困難と一緒に流されていく。
「収入?無いねぇ~・・・3万も無いっすわ・・・」
収入を増やす努力も職を探す努力もしない。ただひたすらライブハウスで歌を歌い、経費(映画製作費)を使って酒を飲みにフラフラと出かける毎日は映画製作予算を食い潰していく。

「ヤバい・・・ドキュメント映画としてまるで成立していない・・」焦った監督が 「有名人とコラボしてレコーディングしましょうよ!プロモーション活動も!そうそう!ラジオ出演すればきっと売れるよ!」
ドキュメンタリーを成立させるためだけに半ば無理やり「売る為の活動(演出)」に強行突破するが、果たして売れるのか・・・?こんな展開がとてもドキドキと楽しいダメ映画。

不純な動機ながらも3か月間の血のにじむような(?)レコーディングとラジオ出演や地道な営業プロモーション活動の毎日。その売上げ結果を、ある晴れた日に公園で監督が発表するシーンは心臓が飛び出るかと思うほどドキドキ緊張します。

そしてラストシーンだけはほんのちょっぴりカッコいい映画を撮った田村絋三監督もやっぱり10代の頃に「PHOOLの大ファンだった」らしい。この映画は2014年7月に関西、中部地方で劇場にて上映されます。血の滲むような地道な努力の末、売り上げがどうなったか?知りたい方は是非劇場に行ってその目で確かめてみて下さい。

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以上、3作品の素晴らしいダメ男のノンフィクション映画、全てに共通していたのが、全てのダメ男たちは定職についていない&ほぼ収入ゼロという事実。 そして「収入が得られなくたって、やりたいことをやる!!今この瞬間に!!」というダメッセージ。彼らには例外なく「やらなければならないこと=やりたいこと」であり「与えられた義務」は存在しなかった。なんと自由で責任感溢れる人生なのかと本気で尊敬してしまいました。
そして驚いたことにやっぱりここにもダメ男の後ろで強く優しい女性がしっかりと支えていました。