ファーゴ
まずはファーゴ。主人公は偽装誘拐を企てる男性3人と、その3人を追い込んでいく1人の女性警察署長。静寂に包まれた銀世界の息をのむ美しい映像と、テンポ良くスリリングに展開していくストーリーが世界的に評価されている名実ともに名作。この映画の一番の見どころは、緊張感あるサスペンスながら笑いの要素もふんだんに盛り込まれているところでしょう。それを実現させているのが、粗末で抜けだらけ、行き当たりばったりの偽装誘拐を企てるダメ男3人と、それを軽快に追い込んでいく強く優しくデキる女性。地味な低予算作品でありながら、女性警察署長役のフランシス・マクドーマンドはアカデミー賞で主演女優賞を受賞し、アメリカ国立議員図書館に「永久保存フィルム」として登録されるほどのデキる女性です。詳細なレビューはこちら。
ナイト・オン・ザ・プラネット
次にナイトオンザプラネット。5つの国の夜にタクシーの中での運転手と乗客のやり取りを描いた、こちらも名作。各話に登場する主人公のタクシー運転手5人のうち、4人は男性ドライバーで女性ドライバーは1人。男性ドライバーは仕事中に「エロい話」しかしないロベルト(ロベルト・ベニーニ)(ローマ編)、運転が下手な上に仕事中にわき見運転で事故るコートジボワール出身のドライバー(イザックド・バンコレ)(パリ編)、そもそも運転の仕方がわからず乗客に運転してもらうチェコ出身のヘルムート(アーミン・ミューラー=スタール)(ニューヨーク編)。ダメダメな男性ドライバーの中で唯一女性ドライバーのコーキー(ウィノナ・ライダー)は将来の目標とタクシードライバーという仕事への誇りを持っている。このタクシーに乗客として乗り込む女性敏腕芸能ディレクター(ジーナ・ローランズ)との爽やかな別れのシーンはとてもカッコ良く、笑いを誘うダメ男性運転手たちとのコントラストを際立たせます。詳細なレビューはこちら。
バッファロー’66
バッファーロー’66の主人公も、ワイルドを気取っていながら、友達も彼女も仕事も無いダメ男ビリー・ブラウン(ビンセント・ギャロ)。これを優しく全力で支えようとする女性レイラ(クリスティナ・リッチー)がすごく健気だ。ダメ男ビリーの横暴さの裏にある、繊細で泣き虫でとことん弱い部分に強く共感できるだけでなく、映像、音楽も文句なしにカッコいいこの映画は、主演、監督、脚本、音楽全てビンセント・ギャロが担当。実際にはダメ男とはかけ離れた人物だけど、「ブサイクな自分の顔がいまだに受け入れられない」というコンプレックス剥き出しのアーティストの作品には共感できるところがたくさんある。詳細なレビューはこちら。
バグダッド・カフェ
バグダッドカフェも小さくスタートして世界的に大ヒットし、1980年代~90年代の「ミニシアター」ブームの火付け役にもなった名作。こちらもモハベ砂漠の荒野に立つさびれたカフェ「バグダッドカフェ」を経営するのは女性で、夫の方は気は優しいが経営も実務も出来ず、パシリ的な仕事すらこなせないダメ男。そこへやってくる太った不気味なドイツ人女性ヤスミンの優しい気立てのお蔭で店が発展していく様子を描いています。前述の3作品はダメ男が主人公、デキる女性はどちらかと言うとスパイス的な役割を果たしてるけど、この作品はデキる女性が主人公。当初は太っていて不気味な女だったのが、その優しさと気立てのよさからか、色気のある美しい女性に変わっていくプロセスはこの映画の見所です。詳細なレビューはこちら。

ショーン・オブ・ザ・デッド
最後にショーン・オブ・ザ・デッド。こちらはゾンビ・コメディ映画。ゾンビマニアがB級ゾンビ映画を作ったら、意外とヒットしてしまった傑作。主人公のショーン(サイモン・ペッグ)とエド(ニック・フロスト)は前述のダメ男たちの中でもエリート級のダメ男。職場で高校生バイトにナメられるやる気ゼロのショーンと、得意分野はマリファナの小売と猿の物まねというデブ・ニートのエド(ニック・フロスト)が賢く美人の元カノを振り回しながらゾンビと格闘する。主人公である2人のダメ男は実際に仲良しで、この作品をはじめとして、「ホット・ファズ」「ワールズエンズ」でもコンビを組んでいますが、いずれもダメ男。詳細なレビューはこちら。

ダメ男と強い女のコンビネーションが何とも言えない「可笑しさ」と「共感」を呼ぶ傑作たちを観て勇気づけられる!!