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ほぼ同じタイトルの「皆殺しのバラード」(山口富士夫ドキュメント)とは別の映画なので注意です。こちらは「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」。

この映画は年間の殺人件数が3000件を越えるという治安が悪いどころの騒ぎではないメキシコの街「シウダー・フアレス」の犯罪の実態を追ったドキュメンタリー映画。ポスターだけ見ると安っぽいB級フィクション映画に見えるけど、これドキュメンタリー映画です。

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世界で一番危険な街と言われるこの街では2010年には3600件以上の殺人が発生したにも関わらず、捜査されるのはその3パーセント・・・更に犯人が逮捕されるのは1パーセント・・・警官は現場に出るときに黒い覆面を被り、真面目に捜査はしない・・・警官が不真面目だからではなく、真面目に捜査して深追いすると命を狙われるからです。

「彼氏にするならギャング♪」と若いギャルがのたまい、ミュージシャンたちは麻薬王を讃える歌をうたい、銃を片手に「ウザイ奴の頭を吹っ飛ばせ」と陽気に叫ぶ。警察は犯罪組織に買収されほとんど機能しておらず、逆らうと犯罪組織に処刑される・・・

イヤだ・・・こんな恐ろしい場所には死んでも行くもんか。行く勇気なんて金輪際無い。でも映画なら、映像だけなら・・・「この映画は観客を現場の中心に連れていく」という公式サイトの文句に好奇心と怖いもの見たさが刺激されてしまう。

そんな聞いただけで具合が悪くなってくる街にカメラが潜入し、機能がマヒしかけた警察の中でひとり真面目に働き続ける警官リチ・ソトと犯罪組織に憧れる若者をひとつのカメラが捉えます。

真面目に捜査をする警官リチ・ソトは周囲からは「命を狙われるからアメリカへ行くよう」勧められるが応じない。生まれ育った街に愛着を持ち「この街にあるのは死と暴力だけじゃない。愛も優しさも気遣いもある。この仕事で街を救いたい」と志を持って仕事に臨むリチ・ソト。

フォトジャーナリスト出身のシャウル・シュワルツ監督によると、「この映画の撮影で最も苦労したのが、この街に一緒に行ってくれる協力者を探すこと」だったそうで・・・そりゃそうだ・・・この映画のことを知ったとき、イの一番に感じたことが「この街に行きたくない」だったから。

このような街で暮らす心境は一体どんなものなのか・・・?!道徳心、倫理観とは無関係に本能的な好奇心と怖いもの見たさで強い興味を抱かせられるこの映画、なんと言われようとまずは観てみたい。

「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」は3月よりシアターイメージフォーラムにて公開。