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先日12/3にDVDリリースされた「アクト・オブ・キリング」を観た!!とにかく異様、異常。観終わったあとに「どう解釈するのが正しいのか?」と頭がぐるぐると混乱して、記事を書くのが遅くなりました。そして頭の中は未だにぐるぐるしていて全然整理できていません。

アクト・オブ・キリングのストーリー

1965年にインドネシアで軍と民兵がクーデターを起こし、逆らった者を共産主義者として大量虐殺を行った9.30事件。監督のジョシュア・オッペンハイマーはこの事件の首謀者たちのもとへ取材へ行き、当時の状況をインタビューする。すると彼らは嬉々として当時の殺人の様子を演じ始めた。そこでジョシュア監督は提案する。

「あなたたちがやったことを映画にしてみませんか?」

そこからこの映画はスタート。「おれたちを歴史に刻む」と意気揚々と自らの自伝映画を制作・出演している様子を撮影したドキュメンタリー。そして虐殺者たちが加害者、被害者を演じながら映画を制作するうちに彼らの表情が徐々に変化していく・・・

この映画は虐殺の歴史的な事実をたどるものではないです。だからこの映画を観ても、歴史がわかるわけではないけど、大量殺人を行った人物がどんな人間で、自分たちが行った虐殺について何を想うのか?それを当時を再現する映画を製作させることで、自らの口で語らせる。マイケルムーアのように質問攻めにして相手を追い込むことも、ナレーションで背景事情を詳しく解説することもせずに、ひたすら彼らの様子を記録します。

強烈に印象に残るのは、出演者たちが、どうやって人を殺したかを自ら詳細に説明するところ。血の臭いが酷かったとか、首をナタで跳ねたあとにどんな音がしたかを説明したり、死ぬまで肛門に木を押し込んだなど・・・
そしてそんな大虐殺をはたらいた人物たちをインドネシア国営放送番組で女性アナウンサーが「彼らは共産主義者たちを殺すための効率的な手法を編み出した」と称賛を交えて紹介するシーンも異様でした。

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そして彼らが制作する映画は公開されたのだろうか・・?もちろんされていないと思うし、されていないことを願います。

「私たち共産主義者を殺してくれてありがとう。1000回感謝します」

と殺された被害者が虐殺者の首に金メダルをかける、制作者曰く「深い感動」のシーン。正気の沙汰とは思えず、きっと何かトリックがあるに違いない。そう思ってしまうくらい、このドキュメンタリーは不自然さと異様さを放っていた。

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そんな異様さを持った映画でしたが、主人公である虐殺者たちはどんな人たちだったかと言うと、彼らはプルマン(自由人)と呼ばれる、言わば「ヤクザ」。現地の人たちからはとても恐れられていて、虐殺映画の撮影に協力する人たちは明らかに怯えていました。撮影の合間にカメラの前で堂々と恐喝して自営業者から金を巻き上げるプルマン。撮影スタッフたちはプルマンに怯えきってはいたけど、その中に一人の被害者遺族がいました。その人が怯えながらも当時彼の家族が殺された様子を語る時の、恐怖と怒りに満ちた表情・・・張りつめた空気・・・観ていて逃げ出したくなりました。ほんとに。この人はあまりスポットライトは浴びていなかったけど、撮影現場ではプルマンたちに笑顔を振りまいて、常に気を遣っているのがいつも画面の隅に映っていたのも痛々しく印象に残る。

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この映画を「罪を悔い改めるように仕組んだだけの映画」と評している人もいたけど、それほど単純なものでもないという印象を受けました。たしかにそういう側面はあると思う。監督のジョシュア・オッペンハイマーは、彼らが自分がしたことを振り返れば必ず悔いるはずだし、そうすべきだという想いが表れていたと思うし、そのシナリオに観ていて冷めてしまう部分はあった。
でも、虐殺を得意気に語ったかと思えば次の瞬間には涙を流して悔いたり、過去を封じ込めようとしたり、見ていて解釈に困ってしまった。彼らの気持ちにまったく共感が持てず、感情的に混乱してくる。「戦争犯罪を問う」という一面においては日本のドキュメンタリー「ゆきゆきて進軍」に共通するものがあったけど、「ゆきゆきて」の中では「加害者」と見なされた人たちは、恐怖に怯えながらも頑なに口をつぐんでいたのに、こちらの映画のプルマンたちはなんでもかんでも明るくペラペラとしゃべってしまう。

虐殺の背景には冷戦時代の西側諸国の存在がある。とか、思考力や創造力の欠如が虐殺を招いたとか、色々な感想が支離滅裂に頭を駆け巡り、なかなかうまく表現できないけど、これまでに観たことのない映画であることは確かです。最初は「160分の完全版が観たい」と思ったけど、もう観る気力がまったくありません・・・

ショックと異様さで観ると混乱する虐殺ドキュメンタリー映画、「アクト・オブ・キリング」は12/3よりDVDレンタル中・・・