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サンダンス映画祭で観客賞を受賞した「パーソナル・ソング」が12月6日よりシアター・イメージフォーラムにて公開!!この映画は、音楽が認知症に有効であるという学説を3年の歳月をかけて裏付けたドキュメンタリー。感動を狙ったドラマティっくな展開よりも、学説に基づいて音楽の効果を実証していくという流れを個人的に期待です。

パーソナル・ソングのあらすじ

主人公はソーシャル・ワーカーのダン・コーエン。彼は認知症の人たちに「個人的に思い入れのある楽曲」を聴かせることで、失った記憶を呼び起こすことができるのではないか?という仮説を立てる。そこで自分の娘の名前も忘れてしまった94歳の老人男性にある曲を聞かせたところ、途端に若いころの記憶を次々と甦らせるという反応を見せた。
更に「若い頃のことを何も思い出せない」という90歳の女性に「聖者の行進」を聴かせると、母親に内緒でルイ・アームストロングのコンサートに行ったことを思い出し、その時の様子を生き生きと語り始めた。次々と認知症の患者たちが劇的な反応を見せたことから、ダンとマイケル・ロサト=ベネット監督は3年間の取材を開始。その様子を記録した、映画としても学術的にも世界的に注目を集めたドキュメンタリー。

音楽は優れた記憶媒体である

記憶には二種類あって、一つは知識的な記憶。例えば旅行に行った記憶であれば、いつ、誰と何処に、どのような手段で行ったか?等という具体的で客観的な記憶。そしてもう一つが感情的な記憶。旅行に行ってどんなことを感じたか?楽しかったのか?どんな景色だったか?など、その時の感情、空気感のような主観的でテキスト化できない記憶。音楽は後者の「感情的な記憶」を呼び起こす、とても優れた記憶媒体だと思う。

生まれてはじめて海外旅行に行ったときにウォークマンで聴いていた音楽。失恋で苦しみながらいつも聞いていた音楽。それらを何年も経過したあとに改めて聴くと、その時の感情や空気感のようなものがブワッ!!とフラッシュバック的に鮮明に甦る。何をどう思い出したのか、言葉で表現するのは難しいけど、自分の周囲の空気が一瞬当時の空気に置き換わったような、タイムスリップしたような感覚。予告編の映像の中で、老人が音楽を聴きながら目を真ん丸にして驚いているのは、まさにこの体験をしているからなのではないかと思う。

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自分が常々感じていることは、音楽が画像や映像に比べて圧倒的に「感情を呼び起こす」ことに優れているということ。ビデオや写真を見ても、そのようなことは起こりにくい。実際、旅行へ行った時や卒業式の写真やビデオを観て懐かしいとは感じても、その時の感情がそのまま甦ってくることは殆ど無い。それよりも卒業式で歌った曲を聴いた方がよほどその時に感じた感情が呼び起こされる。だから辛いときも嬉しいときも、好きな音楽を聴いていると、それがそのまま思い出の宝庫になる。つまり、その人だけの感情的な記憶が音楽に刻み込まれる。「パーソナル・ソング」という題名にはそんな意味が込められているのではないかと思います。

音楽で認知症患者の記憶を呼び起こす実録ドキュメンタリー「パーソナル・ソング」は12/6よりイメージフォーラムにて公開予定!
ちなみに、音楽と並んでもう一つの優れた記憶媒体は「匂い」(自論)。夏の花火の匂い、冬の灯油の匂い、山の朝露の匂い、更衣室の匂い・・・そんな思い出の匂いを感じながら音楽を聴いたら、きっとタイムスリップできる。