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「ハート&クラフト」フランスにあるエルメス工房での職人の仕事を描いたドキュメンタリー映画は2年ほど前にオーディトリウム渋谷で公開されていましたが、このたびエルメスの公式ページで無料公開されている!!僕はエルメスとシャネルとグッチの区別がつきません。バッグにも革製品にも興味はなく、エルメスは「ブランド好き女子が最終的に質屋に入れるもの」であることくらいしか知らず、この映画にもまるで興味はありませんでした。でも今回、WEB上で無料で観れるならと期待もせずに何気なく観ていたら、引き込まれて結局最後まで夢中で観てしまった。

革職人、ガラス職人、型製作職人、塗料職人、何の職人なのかよくわからない職人など10数人の職人の作業の様子を淡々と描く。エルメスにもバッグにも興味のない自分にとって、これだけなら退屈極まりない映画。だけど作業を描く姿のバックに、その職人本人の「いかにこの仕事を愛しているか」を語る声がBGMのように流れる内容に思わず引き込まれてしまいました。

職人である親の後を追って6歳から革職人の仕事を身に付けたという革職人一筋の者から、「とにかく生活費を稼ぐ必要があった」という遠い国からの政治亡命者(どこの国かは不明)、同じく生活のために59歳から職人の世界に入った女性など、様々な背景を持った人が登場するところが面白い。更に惹かれたのが、職人になるまでの背景や動機は千差万別なのに、全員が口をそろえて「仕事が好き」「誇りがある」と語るところ。「早起きが辛いのは毎日だけど、仕事場に行くのが嫌だと感じたことは一度も無いなー」「これこそが天職」「自分がこの仕事を選んだのではなく、この仕事に自分が選ばれた」「毎日勉強するのが楽しい」と哲学者のように落ち着いた口調ながらも生き生きと語る姿に勇気づけられてしまったというのが一番大きなところかも。

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作業をしているその姿には「時間に追われている感」が全く無く、夢中で伸び伸びと「仕事を追っている感」が溢れているところに、なんとも羨ましさと憧れの気持ちと「今日からこんな気持ちで仕事に取り組もう」という勇気が湧いてきた映画は全長45分なので気軽に観れます。フランスののどかな風景と静かな作業場、BGMに静かなクラシックと職人の語り口調が加わる静かな映画は、一度観た後はただBGMとして部屋に流しておいても穏やかな気持ちになれそうです。

あともう一つ印象に残ったのが、出てくる職人が誰も「アート」「芸術」という言葉は一度も使わないところ。芸術品のように優雅な製品であっても、あくまで生活に役立つ「実用品」でなければ意味が無いというエルメスの指針なのかもしれません。

エルメスのドキュメンタリー映画「ハート&クラフト」はこちらのリンク(エルメス公式ページ)で無料で観れます。

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