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イスラエルによるパレスチナ侵攻が連日ニュースで報道されていますが、一体現地では何が起きているのかピンと来ない。という人も多いのではないでしょうか?今回はその「パレスチナ、イスラエル問題」を描いた映画を紹介します。僕はこれらを観るまでパレスチナとイスラエルという国が複雑な確執を抱えていることすら知りませんでしたが、これらの映画を観ることで深い興味が湧き、断片的に知識も増えていきました。「面白い!」と言ってしまうのは誤解を招いてしまうけど、「引き込まれる」映画であることは間違いないです。

2014年8月11日イスラエルとハマス間で72時間の一時停戦が発表され、長期停戦に向けて仲介役のエジプト、イスラエル、ハマスの間で交渉が続けられていますが、2日前(8月9日時点)の情報では互いに譲歩せず、交渉は難航しているようです。これまで何回も停戦しては数時間で再開してしまうのを繰り返し、互いに「そっちが先にやった」とまるで子供のケンカのような状態が続きます。

死者は2000人近くに上り、WEB上ではガザの町並みの航空写真を空爆開始前後で比較して、破壊がどれだけされているかを示した画像が話題になっています。(リンク
更にYoutube上では今回のイスラエル侵攻のドキュメントが公開されており、ニュースに加えてこれらを観ることで、現地で起きていることを知ることが出来ます。

こんな感じでWEB上の情報を集めれば、現地で起きている事実を断片的に知ることが出来ます。 そして僕の場合一番知りたいのは、ニュース映像のようなセンセーショナルなものだけでなく、現地ではどんな人がどんなことを考えて、どんな生活をしているのか?という空気感のようなもの。これに対してニュースは答えてはくれません。それを知る為に有効な手段の一つが映画だと勝手に思っています。そしてパレスチナ、イスラエルを描いた映画は自分が知っている限りでも意外とあるんですね(入手できるものは限られますが・・・)

自由と壁とヒップホップ



イスラエルからの攻撃にさらされながら、世界初のパレスチナHipHopグループ「DAM」の活動の様子を描いたドキュメンタリー映画「自由と壁とヒップホップ」。2014年7月に開始されたイスラエル侵攻でも子供・若者の犠牲者について議論を呼んでいますが、この映画ではその若者たちが抱く想い等が描かれます。
この映画のジャッキー・リーム・サッロームという女流監督は、ニューヨークを拠点とするアラブ系アメリカ人。子供のころから映画を含むメディアでは自分のルーツであるアラブ人がことごとく「テロリスト」として描かれることに違和感を感じ、「パレスチナに対する新しい視点を提供したい」という想いからパレスチナに滞在し4年間の歳月をかけて製作された映画です。

ライブでのDAMの問いかけに対する観客の応答が印象的です。「麻薬いるか?!」「いらない!!」、「銃は?!」「イヤだ!!」、「秩序は?!」「欲しい!!」」そんなやり取りや、銃弾が飛び交う戦場と化した街で遊ぶ子供たちの姿が強烈な「自由と壁とヒップホップ」のDVDは8/20にリリース!!TSUTAYAでも借りれます。

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パラダイス・ナウ



僕がパレスチナに興味を持つきっかけになった、パレスチナ人監督とイスラエル人プロデューサーが手を組んで製作された 「パラダイス・ナウ」。これはフィクション映画ですが、戦闘地である現地ナブルスで撮影され、映画の中で響く銃声は本物。 自爆テロを命じられた2人の若者の葛藤を描きます。その終わり方は壮絶を極めますが(これまでに観た歴代映画の中で最も壮絶でした)、実際に戦闘が激しいパレスチナ自治区で撮影されたこの映画が放つ空気感は、遠い国へ旅をしているような感覚になれます。こちらでも詳細をレビューしている名作なので観てみて下さい。

また、この映画の監督であるハニ・アブ・アサド監督による、パレスチナの若者を描いた劇映画「オマール最後の選択」も2015年に劇場公開予定です。

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戦場でワルツを



次の作品は「戦場でワルツを」。こちらも泥沼化したレバノン内戦で発生した「パレスチナ難民大虐殺事件」に迫ったドキュメンタリー。この事件は「サブラ・シャティーラ」と呼ばれ、レバノンの親イスラエル派の大統領候補が暗殺されたことがきっかけで、その報復としてレバノン軍団が「パレスチナ人」をわずか3日間で3000人以上虐殺したという史上最悪の事件。

この虐殺に加担していた、当時19歳のイスラエル軍兵士だったアリ・フォルマン監督が当時の様子をほぼ全編アニメーションで描きます。監督のフォルマンは、この戦争に参加したのにも関わらず、その記憶がほとんど無い。失った記憶を取り戻すため、フォルマンはかつての戦友や上司たちに会いに行き、当時の様子をインタビューしていきます。映画はそのインタビューの内容、つまりは戦友たちの戦争の記憶をアニメーションで再現していきます。そしてインタビューを続けるうちにフォルマンは戦争の記憶を徐々に取り戻していきます。そこにはあまりにも凄まじい記憶と衝撃の事実がありました・・・・

こちらでも詳細をレビューしている名作なので、観てみて下さい。

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パレスチナ1948・NAKBA



この映画はイスラエルのキブツという居住地区に実際に住んでいた経験を持ち「パレスチナ」(岩波新書)の著者でもあるジャーナリスト広河隆一監督による作品。2008年にユーロスペースやUPLINK、シネマジャック&ベティ他にて上映されました。

広河監督はイスラエルに憧れて1967年に23歳でイスラエルのキブツに研修旅行に出ました。広い緑と色彩豊かな花が美しい景色の中の果樹園で働く広河さんは、ひまわり畑の向こうに白い廃墟があるのを見つけます。

「この白い廃墟のことを周囲の人に尋ねたが誰も答えてくれなかった」

という広河さんはその後一年以上経ってから、その白い廃墟はパレスチナ人が暮らしていた村で、地図には村の名前が消されていることを知ります。そのことがきっかけでパレスチナとイスラエルを取材するようになり、フォトジャーナリストとして40年間以上パレスチナを追う活動を続けます。その間に撮った写真は数万枚、映像は千時間を超えます。しかしその多くがマスメディアの限界にぶつかり未発表のままだったそうです。「このまま眠らせてはいけない」と、それらの貴重な映像を映画として発表するための活動を経て、この映画が完成。この映画はDVD化されていて(レンタルはされていないと思いますが)購入することができる貴重なドキュメンタリー映画です。

広河さんは1982年に起きたレバノンのパレスチナ難民キャンプでの大虐殺事件(サブラシャティーラ事件)の時も現場で映像を撮っており、その映像は世界的なスクープとなりました。この虐殺事件は当時イスラエル兵士だったアリ・フォルマン監督によって製作されたドキュメンタリー映画「戦場でワルツを」でも描かれています(上で紹介した作品です)。

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石の讃美歌

パレスチナ人による貴重なドキュメンタリー映画(ただしその内容からか、半分フィクション映画が織り交ぜられています)。1990年に発表された映画ですが、イスラエル兵士によって銃で撃たれて負傷した人や、家を破壊されて泣いている様子が描かれています。残念ながらレンタルや購入ができるDVDやビデオは出ておらず、Youtubeにその一部が掲載されていますが、それだけでも引き込まれる衝撃的な映画です。

我々のものではない世界



この映画もパレスチナ人監督による作品です。2013年に山形映画祭で最高賞を受賞した映画で、レバノンのパレスチナ人難民キャンプを描いたドキュメンタリー映画です。仕事も無く、難民キャンプから出ることもできず、無力感と戦いながら「おれはいつでも自爆テロが出来るんだ」というセリフが強烈に印象に残ります。この映画もまだ観ていないのですが、予告編を観ただけで本編が観たくて仕方がないです。DVD化、もしくは劇場での公開を強く望んでいます。

こんな具合に、気軽に手に入る作品は少ないのですが、まずはDVDでレンタルも出来る「パラダイス・ナウ」や「自由と壁とヒップホップ」を観てみると良いかもしれません。大事なのは断片だけを観て「それが全てである」と錯覚しないことだと思っています。日本人が撮った映画、パレスチナ人が撮った映画、イスラエル人が撮った映画など色々観て、解釈や感想を少しずつ立体化させていくことが、大きな国際問題を解決させていく糸口になると信じています。