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26歳のフィンランドの新鋭ペトリ・ルーッカイネン監督による作品「365日のシンプルライフ」が8/16よりオーディトリウム渋谷で公開されます。この映画の内容は、彼女にフラれてヤケになったペトリ監督が、家具や洋服含めて自分の持ち物を全て倉庫に預けるところからスタートします。倉庫から全裸で自宅に帰り、何もない寒々とした部屋で一夜を過ごす。翌日から一日に一個だけ、必要なものを倉庫から持って行き、それだけを使う。モノを買うのは禁止。こんな生活を365日送り、自分の生活や幸福のために必要なものが何であるかを確認するという「実験」を記録した映画です。

大量消費社会への批判という安っぽい問題提起ではなく、大量にモノを所有することに躍起になっていたペトリ監督が、必要のないモノをすべて放棄して生活した時、自分の心にどんな変化があるのか?というのを映画を撮りながら実験した、とても個人的な内容が面白いです。

それでも実は観る前はちょっとした不安もありました。こういう類のテーマを題材にしたドキュメンタリーは大量消費時代への単なる批判につながっていく傾向があるような気がするからです。「大量にモノを所有しても幸せにはなれない&大量消費は環境破壊につながる」⇒「大量にモノを所有することはいけないこと」⇒「だからみんなモノを捨てようぜ!」こんなことをわざわざ映画で主張されても、映画としてはちっとも面白くない・・・

でもこの映画はそういった説教臭さや嫌味は全然無く、周囲のモノを全て強制的に取り除いてみることで、人物や精神的な部分にしっかり光を当てているので、映画としてとても面白いです。ペトリ監督が映像クリエイターだということもあってか、ドキュメンタリー映画としては映像や音楽もあかぬけています

この映画を観てまず驚かされたのは、フィンランドでも夏は皆半袖やタンクトップで外を出歩き、自然の多い景色も街並みも最高にキレイな国であるということを初めて知ったことでした。アキ・カウリスマキで出てくるフィンランドはもっと暗い印象だし、ナイトオンザプラネットでは街全体がキレイな雪に包まれていたし、フィンランドは一年中寒くて雪ばかり降っていて、太陽はあんまり顔を出さない国だと思ってました・・・・

そしてこの映画の最大の魅力は出てくる人物の人柄が明るくて面白い。主人公ペトリの髭が似合わないことにお母さんが腹を抱えてケタケタといつまでも笑う姿や、小学生くらいの従妹に実験のことをバカにされてるときに、ペトリが顔を真っ赤にして爆笑している姿、お婆ちゃんの明るく前向きな言葉も最高に面白くて、思わず顔がほころんでしまいます。静かでおっとりしているけど、優しく独特のユーモアがあるのは北国の人の特徴である。という自分の持論はここにもあてはまりました。

フィンランド発の上質ドキュメンタリー映画は8月16日よりオーディトリウム渋谷で公開されます。

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