濃くて面白い映画だけの情報サイト



先日、親友から10年前から借りっぱなしになっていた「Little Birds イラク戦火の家族たち」を観ました。途中まで。途中まで観たけど、痛々しい映像を直視できずに途中で観るのをやめてしまっていました。

その後は「観たい」という気持ちと「観るのが怖い」という気持ちがせめぎ合い、観るのがズルズルと先延ばしになりつつあるのが自分でもわかりました。そして一方で2014年8月2日時点で「イスラエル軍によるパレスチナ ガザ地区侵攻」で、死者が1500人を超えたというニュースが毎日流れ、このニュースを見た時、イラク戦争もガザ侵攻も理由や背景が殆ど同じであると感じました。イラク戦争ではアメリカ軍が「イラクが隠し持っている核兵器を取り上げる」という名目でアメリカが仕掛け、イスラエルのガザ侵攻は「パレスチナがテロリストを送り込んでいる地下トンネルを壊す」という名目で、ほぼ一方的にイスラエルが攻撃を仕掛けています。

だから「Little Birds イラク戦火の家族たち」を観てイラク戦争で何が起きていたかを知ることは、今のガザ地区で何が起きているのか知ることにもつながっていくかもしれないという根拠のない思いから、昨夜本編を最後まで、加えて特典映像も最後まで観ました。

印象に残るのは、アメリカ軍がバグダッド市内に戦車で侵攻するところに、ひとりの若い女性が立ちはだかる場面。

「あなたたち何人の子供を殺したの?!病院で死に絶えていく子供たちを見たの?!今すぐ病院へ行って見てきなさい!!」

と叫ぶシーン。戦車に乗る米兵は誰も彼女と目を合わそうとせず、彼女から逃げようとしているようにも見えました。

この時、「その言葉は自分にも向けられている気がした」という、この映像の撮影者でもある綿井健陽監督のカメラは病院内に向けられます。そこで頭にクラスター爆弾を直撃して苦しみながら息絶えていく5歳の女の子シャハッドちゃんと、シャハッドちゃんの手を泣きながら握る父親アリ・サクバンさん。その横のベッドでは3歳くらいの男の子が横たわり、父親が上から覆いかぶさるように「愛しい子よ!愛しい子よ!」と繰り返し泣き叫び、祖父と思われる男性が狂ったように自分の頭を叩いていました。いくら文章で書いても表現しきれない惨状に圧倒され、動揺しました。

そして綿井監督のカメラは、街を巡回する米兵に向けられます。「米兵が来たことで、イラク国民は解放された」と語る米兵に「核兵器は見つかったのか?そもそもこの戦争の目的は核兵器を見つけることだろ?核兵器はどこにあったんだ?」と問い詰めると、米兵がゆっくりと逃げて行く姿が強烈に印象に残ります。

この場面だけでなく、この映画にはアメリカや国際が振るった暴力について、綿井監督のどうしようもない怒りが画面いっぱいに拡がっていました。そして映画の中で綿井監督のインタビューに対して「イラク国民を助けに来た」「彼らは米軍を歓迎してくれているはずだ」と答える米兵たちの表情はの明らかに引きつり、口調にはまったく自信が無いように見えました。

確かにこの映画を観る限り、アメリカ軍が行った残虐行為はどう見ても虐殺にしか見えず、アメリカ軍による爆撃で子供を3人失ったアリ・サクバンさんが家に置いた機関銃を示して「これで米兵を殺してやる」と震える姿に共感し、もし自分の子供が同じ目に遭わされたら・・と考えただけで暴れたくなるような気持にもなりました。

それでも、引きつった顔でインタビューに答え、問い詰められてコソコソと逃げる米兵を見ていると怒りを覚えるどころか、この米兵たちすら「気の毒だ」と同情を感じてしまう。その理由は「この米兵たちも、僕らとそれほど変わらない」と思ってしまったからだと思う。

アメリカからイラクに派遣された人数は撤退する2011年時点で17万人近くに達していて、ソニーの全社員数よりも多い規模です。そんな大所帯で派遣された米兵一人一人の立場は、上から降ってくる指令や業務内容を待つ大企業の社員とあまり変わらないのでしょう(あくまで「立場」という観点で)。だから自分が直接爆撃したわけでもないし、爆撃された人たちがどんな人だったか、どんな服を着ていたか、兄弟は何人いたか、爆撃を受けてどのくらい痛かったのか知らないし想像もしたことがない。だから綿井監督に突然問い詰められても取って付けたような答えしか返ってこない。

「いや、そこが非人道的じゃないか!」と日本が他人事のように批判する余地は残されていない。というのが綿井監督の主張でした。日本は米軍に協力し、自衛隊を派遣して、イラクへ飛び立つ飛行機は沖縄等の在日米軍基地から飛び立っています。だからイラクから見た日本は米兵とそれほど変わらない。

綿井監督に向かってイラク人が迫るシーンがあります。

「日本は素晴らしい国だ。大好きだよ。そんな日本がなんでこんな戦争に加担したんだ?!」