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カンボジアのポル・ポト政権によって1975年から1979年まで4年間続いた恐怖政治の記憶を伝える「消えた画 クメール・ルージュの真実」を観てきました。歴史を知るという意味で、とても良い経験になりました。この映画の凄いところは、当時のポル・ポト政権による強制労働や虐殺の被害者(当時13歳)が監督・製作しているところ。リティ・パニュ監督は友人や家族全員を虐殺によって失い、命からがら奇跡的にカンボジアから脱出して生き延びました。その当時の記憶を呼び起こし、木製の人形によるアニメーションで当時何が起きていたかを再現します。

この作品含めて現在公開中の「北朝鮮強制収容所に生まれて」や、このサイトでも紹介しているアカデミー賞受賞の名作「戦場でワルツを」も悲惨な虐殺を描いたドキュメンタリーですが、すべてに共通しているのは、実写ではなくアニメーションで描かれていること
その理由は、虐殺を行っている側はその実態の詳細を隠すため、当時の様子がわかるような映像素材が殆ど残されていないことや、数少ないニュース映像や虐殺加害者側が製作したプロパガンダ映像では、当事者たちの経験を表現しきれない為、このようなアニメーション形式で行われるのでしょう。

そのため、この映画も半分以上は手作りの木製人形によるアニメーションで描かれます。ポル・ポト政権は当時のカンボジア国民700万人のうち150万人以上(実に国民の4人に1人程度)を虐殺したと言われていて、特に狙われたのが教師等の知識人。これはカンボジア内外の情報の出入りを防ぐためだったと言われています。事実、この時期に大虐殺が行われていたことを、他の国々は正確に知らなかった。この映画で流れる当時の映像もポル・ポト政府が作成したプロパガンダ映像(政府が思想を浸透させるために製作した宣伝映像)で、事実を捉えたものではありません。

だからリティ・パニュ監督は当時の記憶を「消えた画」としてアニメーションで再現し、それらを残すことを試みたこの映画は7/5よりユーロスペースにて公開中です。